【僕の感想】第19回:小説「何者」

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何者 (新潮文庫)

この本の概要について

本の概要に関してはAmazonの商品ページの内容紹介に記述されていますので、そちらを参照願います。

感想

2013年の直木賞受賞作です。2012年発売。

最初にストレートに感想をお伝えすると、この小説はとても面白いです。
SNSが日常的に活用されている現代に、恐らく多くの人が感じているであろう暴かれたくない心の内面を的確に抉ってきます。そして、その心を乗り越えるための暖かなエールを送ってくれます。

この小説のメインの登場人物は就活に直面する大学生達です。

就活は大学生にとって初めての「全人格を値踏みされる場」です。
企業は、なにひとつとして遠慮することなく「あなたは”何者”か」と尋ねてきます。

その場において、ある者は学生時代に打ち込んだ留学・インターン等の経験を語り、ある者は逃れられない現実に立ち向かい何かに気付く。そしてある者は何かに気付く事を避けるために現実から逃げ続ける。

全ては”何者”かになるために。
もしくは自分が”何者”であるのかという問いから、目をそらし続けるために。

おそらく多くの人が、かつて”何者か”に憧れた事があるハズです。
それはアイドルかもしれませんし、政治家かもしれませんし、作家かもしれませんし、映画監督かもしれませんし、社長かもしれません。とにかく「名のある人物」や「ひとかどの人物」になりたいと考えた事がある人は多いハズです。

自分が何者であるかは、行動だけが証明してくれます。
何者かになりたいのであれば、とにかく、その様な人物になるために行動するしかない。
何も行動していないのであれば、その人は「何も行動していない人」でしかない。

しかしながら行動には痛みも伴います。自分の「何物でも無さ」に絶望する事もあるでしょう。
そこから逃げる事も出来る。立ち向かう事も出来る。どちらの選択をしても、人は何者かにはなれる。逃げた場合は「逃げた人」に、立ち向かった人は少なくとも「立ち向かった人」に。

何かに挑戦する姿は決してキレイなモノでは無いかもしれません。
誰かに嘲笑される事すらあるでしょう。後ろ指を刺され、罵倒される事すらあるかもしれない。
その様な扱いに耐え、走りぬいた結果、必ずしも望む姿になれるとも限らない。
無残にも野垂れ死に「あいつは結局”負け犬”だったね」と言われてしまうかもしれない。

それでも挑戦しなければ、人は、その人が望む”何者”かになる事は出来ません。
この記事を読んで頂いているあなた、そして僕は、今、”何者”でしょうか。
その姿は、いつか”何者”かに憧れた僕達自身に、誇れるモノになっているでしょうか?

そんな事を感じさせてくれる傑作でした。

以上です。

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