【ど素人店長、ネットショップでさをり織りの布を売る】第3回 :役に立つ話をしよう

ど素人店長、ネットショップでさをり織りの布を売る - アイキャッチど素人店長、ネットショップでさをり織りの布を売る

前回は、さをりのネットショップを作るにあたり、どんなコンセプトでやっていこうと考えたのか、お店を開いてからの失敗談などを伺いました。

今回は、『ど素人』がネットショップを立ち上げるときに気を付けることや、ECサイトの選び方などを教えてもらおうと思います。

なお、今回もインタビュー形式ではありますが、一人二役でお送りいたします。インタビュアー・ぢーこの言葉は「――」で始まり、インタビューされるぢーこの言葉は「」でくくられています。

ECサイト選びのポイントは?

――こんにちは、今日もよろしくお願いします。

「お願いします!」

――あれ? なんだか張り切ってますね。

「いや、だって、今日はECサイト選びとか、役に立つ話ができそうじゃないですか? 役に立ったと一人にでも言ってもらえたら焼き肉でしたよね?」

――そうでしたね。

「何でも聞いてください!」

――じゃあ、早速ですが、さをり布の販売方法としてネットショップを選んだ理由は何ですか? レンタルボックスや店舗で出張販売するというのはアイデアとしてなかったのでしょうか?

「え? そこ? ずいぶんと斜め上からきましたねー」

――モノを売るって、やっぱり手に取って見てもらわないと売れない気がして。特に布ですから手触りとか色合いとか、写真じゃわからないじゃないですか。

「その通りですよね。まじめにお答えすると、まず店舗もレンタルボックスも借りるのにお金がかかるじゃないですか。それにレンタルボックスは近所に一軒だけあるのを知ってますが、お店にお客さんがいるところを見たことがないですし、そもそも私が住んでいる町は駅前がシャッター商店街化しているので、お店に並べたところで売れるとも思えなかったんです。それに毎月の仕入れ点数が20~30枚くらいですから、わざわざお店を借りて並べるほどの商品数でもないですし。ネットショップならお客様が全国にいるので、買ってくださる人を見つけやすいかなと思いました

――ネットショップを開設せざるを得ない条件がそろっていたということですか?

「そうですね。そもそもさをり織りグッズは前から福祉作業所の方がイベントで出店販売されていたんです。人口6万人の町で買ってくださる方を奪い合っても仕方ないなと思っていました。だから、リアル店舗での販売は最初から考えていませんでした。仮にもしお店を無料で貸してくださるという奇特な人がいたとしても、私に対面の接客ができると思えなかったので断っていたと思います。好きな時間に仕事ができることも大事でした。朝が弱いのでリアルな店舗を持って商売することは自分には無理!と」

――その辺が本音ですね。

「そうですね。ネットショップならだれにも会わずに仕事ができるし、働く時間も自分で好きに選べるので、社会に適応できなくても問題なくやっていけるかと。…なんか言ってて悲しくなってきました」

――いやいや、大事なことですよ。『ネットショップなら全国にお客様を見つけられる!』なんていうのは上っ面の言葉です。

「そうですね、まったくその通りです」

――あれ? さっきぢーこさん、このまんまのこと言ってませんでしたか?

「すみません、上っ面な言葉でした。全国にお客様がいたとしても、その方々に見つけてもらう苦労は並大抵じゃないですよ。店舗販売なら少なくとも店の前を歩いている人の目には止まります。でもネットショップなんて興味がない人にはどうやったって届きませんからね。一日のアクセス数がゼロの日だってあります。全国にお客様はいるかもしれないけれど、私のお客様がいるとは限らないです

――じゃあ、今日はその辺りも踏まえてお話を聞かせてください。

「はい」

――では戻りまして、なぜECサイトなのかっていうお話から伺いたいと思います。世の中にはオークションサイトやフリマサイトなど、販売の形態はいろいろあると思うんです。どうしてECサイトを使った自前のネットショップっていう形を選んだのですか

「一つは、さをり布を売ろうと思ったときに、すでにふらとぴクリエイター加入が決まっていたからです。ふらとぴの運営をしている『株式会社Egene』は福祉施設にECサイト導入をお勧めすることも仕事の一つです。営業に各施設を回ろうと思ったら、自分自身もECサイトのことを少しはわかってないと話ができないんじゃないかと思いました」

――なるほど。システムの勉強のためってことですね。もう一つは?

お店のコンセプトを打ち出しやすいからです。オークションもフリマも売っている商品の説明は念入りに読んでくれそうですけど、売っているショップのコンセプトまで探して読む人はいないでしょう? 私としては読んでほしいのは『どうしてやるのか』です。さをりを売りたい理由や、モノづくりを勧めたい理由がある。それに賛同してくれる人がちょっとずつでも増えたら嬉しいなと思っているので、それを書けるところが欲しいと思いました」

――その割にBASEのブログはあまり更新してないような…。

「それはですね。当初はサイトにリンクしたnoteに力を入れていたんです。布を売るためにこんなものが作れますよっていうアイデアを一緒に売ろうと制作記録をちょこちょこ書いていたんですよ。で、最初は『書くためにモノを作る』だったのが裁縫にはまってしまって作るのが楽しくなっちゃったんです。で、書く時間を割いて趣味の裁縫をしているので書く時間が無くなっちゃったという」

――本末転倒ですね。

「そうかもしれないです。でも楽しんでやってることの方が興味を持ってくれそうじゃないですか? 楽しくないのに義務でやってたら絶対それは伝わるなと思いません?」

――まったくああ言えばこう言う人ですねえ。では、ECサイトが複数ある中でBASEを選んだのはなぜですか?

「これも理由が二つあります。一つは利用料がかからないことです。売れても売れなくても一か月の利用料が一律いくらかかかるところは、売れなかった時のリスクを考えると怖くて使えませんでした。何しろうちは売ってる商品の単価は安いし点数も少ないので、毎月全部売れたとしても利益がそんなにないだろうと思っていましたので」

――なるほど。二つ目の理由は何ですか? 

BASEで友達がすでにネットショップを開いていたからです。初心者にはいろいろとぶつかる壁があるんですが、たいていのネットのサービスってサポート窓口に連絡してもすぐに解決しないことが多いじゃないですか?」

――そうじゃないところもあると思いますが。

「 私がネット上で使ってるあらゆるサービスはたいていサポート窓口が異様に混んでいて平気で数日待たされるんです。もう、何かの呪いかってくらい待たされます。BASEには質問したことが無いのでわかりませんが、流行っているところってサポート窓口も忙しそうじゃないですか?」

――偏見ですねえ。

「私の7割は偏見でできてます。だから、サポート窓口をあてにせず、すでに知ってる人を頼る方がいいと思ったんです。実際、たいていの疑問は友達に訊けば何とかなりましたし。あとは技術評論社という出版社がそのシステムの利用方法について本を出していれば完璧です。『無料で始めるネットショップ 作成&運営&集客がぜんぶわかる!』という本はけっこう踏み込んだことまで書いてくれているので助かりました」

――なるほど。よい参考書とよい師ですね。

「そうですね、大事です。受験と同じです」

ネットショップでさをりは売れたのか?

――では次に。連載当初からみんな聞きたかったことだと思うのですが、ショップを開設してさをりはすぐに売れたんですか

「はい、売れました。正確には初月が一番売れました。たぶん、ショップを開く前からFacebookでさをりを織る人に出会った話や、さをり布がすっごくきれいなのに施設の工賃は時給200円でそりゃないでしょと思った話など、もろもろ友達に向けて書いていたので期待感と応援したい気持ちが高まっていたのだと思います。びっくりするほど売れました

――ちなみにおいくらほど?

「三万円ちょっと」

――それってびっくりするほどの売り上げなんですか?

「だと思います。よそもそうなのかもしれないですがBASEってインサイトをしっかり見せてくれるんですよ。インサイトって、ショップへのアクセス数とか、どれくらいの人がうちのお店をお気に入り登録しているかとかの外からは見られないデータのことなんですが、売り上げが出ると、BASEに出店している全ショップの中の順位まで教えてくれるんです。それによると、一か月で三万円ちょっとの売り上げがあったコースタ814は8000位くらいでした。BASEに登録しているショップの総数が140万店ほどだっていうからすごくないですか?」

コースタ814のランキング

――つまり、140万軒ある店舗の中で3万円を売り上げるのが全体の5%くらいってことですか?

「そうなんです。そう考えると、結構な偉業じゃないですか?」

――そうですね。というか、ネットショップはそんなにレッドオーシャンなんですか

「どうなんでしょう? 売り方がうまい人にとってはそうでもない気もしますが」

――ぢーこさんは売り方がうまかったんですか?

「いえ、私はかなりへたっぴです。うちのお店で布を買ってくださっているのは前からの知り合いや友達で、当初目指したハンドメイド作家さんには全然届いてないと思います。全国にお客様がいても、私のお客様には会えていない状態です。それでも行商でネットを通さず販売したりして黒字にはなりましたし、織り手さんにちゃんと還元はできたのでよかったですが」

――売るためには何をしたらいいんでしょうか

「ネットショップを立ち上げてからいくつか講座を受講してSNSを用いた売り方を教えてもらったんですが、それによると一応セオリーと言われるものはあるんです」

――どんなものですか?

「ハンドメイドグッズを売るときには①Instagramに力を入れ、ユーザーに見てもらえるハッシュタグを研究する②初見で買いたくなるよう写真に力を入れ、世界観を写真で表現する③あらゆるSNSを使って広告し、話しかけてくださるお客様とのやり取りを大事にする。これはいわゆるファンを作れっていうことですね

――試しましたか?

「試しました。が、いまだにコースタ814にインスタからやってくるお客様は皆無です。それなりに「いいね」はつくのですが、それだけです。新しいファンを獲得するというところは本当にできてない。さをり好きな人たちにはまったく届いてないと思います」

――写真はどうですか? 初見で買いたくなるような写真は撮れましたか?

写真はとても苦労しました。最初の月はとにかく量が多くて、80点くらい商品が届いたんです。それぞれを全部、最低5枚撮影しなくちゃいけないんですが、どう撮ったらきれいにかわいく取れるのか全然わからないんです。これは、最初の月に撮った写真ですね。迷走してます。

最初の月に撮った写真

二か月目は、どうやったらかわいく見えるかだけを考えて、買ってくださる方の便宜は全く考えず、布を丸めて上から撮影していました。さらに迷走してFacebookの友達からは『なんだかわからない』と評判が悪かったです。

さをり織りを丸めた写真


それに、どちらも夜中にライトをつけて撮っていたのですが今一つきれいじゃない。困ってたら『自然光で撮るといいよ』と友達に教わり昼間に外で撮るようにしたらかなりいい感じになってきました。

自然光で撮った写真

でもそういうめちゃくちゃ苦労してたどり着いたことが、BASEのメルマガにサクッと載ってたりするんですよね。もっと早く教えてよ、って思います」

――でも、そういう情報っていっぺんに届いてもまず読まないんですよねえ。商品の撮影は一眼レフですか?

「いいえ、iPhoneX。いいカメラが欲しいんですが、さをりを使ったサンプル製品を作るのにミシンも欲しくて。悩んでます」

――できる人に頼っては? カメラマンさんに外注するとか。

「その費用だけでさをりの売り上げが吹っ飛びます。小さいネットショップを運営するときは、できることは全部自力でやらないと利益が出ないんですよ」

――その割に高額なミシンやカメラは欲しいって矛盾してませんか?

「何をおっしゃいます。ミシンやカメラが新たな売り上げを作ってくれたら、それは『投資』になるうえに 私のおもちゃも増えるんですよ。人に頼んでたらおもちゃは増えない。どっちが得かと言ったら、絶対自分で買う方ですよね」

――ぢーこ流経営哲学ですね。

新しいアイデアはどこに?

――それにしても、売るためのセオリーが通じないとなると、オリジナルなやり方を編み出すしかないですよね。

「そうなんです。まだ三か月ですから、セオリーにのっとったインスタ投稿は続けていくつもりではありますが、一方でセオリーって『過去にこうやったらうまくいった』というサンプル集でしかないのかもしれないとも思います。オリジナルなやり方を編み出すってほどの気合はないんですけど、あれこれやってるのは楽しいので、何かしらものになるといいなあとは思います。私は『さをり布とその加工アイデアを売る』というところを推していきたいとは思っているんですよね。でも、何しろ作るのが楽しくて説明写真も撮り忘れるし、説明がめんどくさくなると『YouTubeに全部載ってるから、そっち見たらいいんじゃないか』と思ってるくらいなので、アイデアを売るっていうところが実行できてない」

――ライターとは思えない発言ですね。文章で説明してこそのライターでしょうに。

「見せた方が早いと思っていることを、ちまちまと文字にしていく作業は拷問でしかなくて」

――じゃあ、YouTubeを始めてはどうですか? 

「それも考えたんですが、わかるように説明しようと思うと結局絵コンテを書いたり、原稿を作ったりしなくてはならないので写真と文章で説明するのとかかる時間は変わらないんですよね。」

――じゃあ、裁縫の時間を削ってライティングを頑張るしかないですよねえ。

「そうですねえ。聞くところによると、コロナ自粛の影響でミシンが売れてるらしいんです。最初はマスクを作るためにミシンを購入した人たちが、ハンドメイドの面白さに目覚めて裁縫にはまってるんですって。だから、さをりが売れるための下地はできてると思うんです。あとはその人たちが作りたいと思う何かをポンと放り込めれば波紋が起きると思うんですよね。」

――ですよね。かわいくて、簡単で、私もやってみようかなと思えるような何か。

「一つアイデアがないわけじゃないんですが…」

――なんですか?

「私、多肉植物が好きで結構な種類を育ててるんですよね。多肉って手がかからないしインテリアにもなるので人気が高いんです。さをりでその多肉さんたちの鉢カバーを作れたら可愛いんじゃないかなと思って」

――「多肉×さをり」ですか。なんか良さそうですね。イメージはすごくかわいい。

「でしょ? それに、コースタ814の作家さんたちは、こちらからこんな布が欲しいってオーダーすることができないんですよね。例えば『80㎝×80㎝の赤い布を織ってください』とお願いしても、その通りのものはまずできない。彼女たちは、その時の気分で自分の好きな糸を選んで作りたいし、それが表現活動だから。だとしたら、服とか帽子とか、バッグとか大きいものは作れないなと思ったんです。必然的に小物の作り方を提案するしかないんですけど、そうすると彼女たちが通っている福祉作業所で作っているものとかぶっちゃう。かぶった結果、作業所の授産製品が売れなくなるのは私の本意ではないんです。だから、かぶらないもの、まだ作ってないものを考えた方がいいと思ったんですよね」

――なるほど。

「それで、百円ショップで売っているものを眺めながら、手作りしたら可愛くて作業所で販売していないものを考えていたら思いつきました。鉢カバーだけなら麻や竹で作られている製品が時々出ているんです。でもさをりで出しているところはない。作るのも簡単そう。可愛い。多肉愛好家ならこういう使い方は好きそう。なのでサンプルが可愛ければ、そこそこ作りたいって人がいるんじゃないかなって思ってます」

――サンプルにかかっているわけですね。

「そうですね。あとは、その作り方の説明をちゃんと書くこと。作ることばかりに熱中しすぎて、目的を忘れないことですね」

――じゃあ、次回はそのサンプルのお話が聞けるといいですね。どうなるんだろう。連載開始以来初めてワクワクします。

「ハードル上げないでくださいよ。私めっちゃ不器用なんですから。あ。そうだ。記事を読んでくださった皆様、どうもありがとうございました。今回、お役に立てる話ができたと自負しているんですが『これは良いお話が聞けたぞ』と思われた方は、記事のシェアなど何らかの意思表示をお願いしまーす。焼き肉明洞に行くぞー!」

ぢーこ運営ECサイト:コースタ814

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コースタ814は、もともと仕入れている数が少ないので、月末が近づくと、在庫がないことがよくあります。申し訳ありませんが、そんな時は布を見るだけでお楽しみください。

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