【僕の感想】第14回:映画「ジョーカー」

「僕の感想」アイキャッチ画像僕の感想

ネタバレあり感想

最初に僕の感想を一言で表すと「不道徳な映画だった」となります。
これは全然、悪口では無いです。本作は「不道徳な作り」にする事により、観客に「ジョーカーは現実でも誕生し得る」という感想を抱かせる効果を生み出していると感じています。

以下、僕がその様に感じ、考えた理由について説明していきます。

最初にこの映画のストーリーに対する僕の解釈を提示しておきます。
というのも、本作は以下の様に複数の解釈が可能となっているためです。

  • 本作で登場するアーサーはバットマンシリーズでヴィランとして登場するジョーカーとは別物である。その根拠は他のバットマンシリーズで登場するジョーカーとバットマンには年齢差がほとんど無いモノとして描かれているが、本作では明確にジョーカーの方が年齢が上の設定となっているため。
  • 本作は全て映画のラストシーンに登場する精神病棟でカウンセリングを受けているアーサーが考えたジョークであり妄想である。つまり本作は叙述トリックを用いて制作されている。その根拠は暴動シーンの後にアーサーが精神病棟に収容されているという流れが不自然であるため。

他にも色々な解釈が存在するとは思いますし、他のバットマンシリーズとの整合性を考慮して「バットマンシリーズにおける本作の位置づけはこれだ!」という推測を行ったりするというのも、本作の楽しみ方として非常に正しい行為だと思います。しかしながら、僕はそこまでバットマンシリーズに詳しいわけではないので(というか、全然、詳しくない)本感想を書くにあたっては、そういうポジションからではなく、以下の様にストーリーを解釈した者という立場で臨みたいと思います。

  • 本作はあくまでも「善良な市民が、重大犯罪を繰り返す犯罪者へと変貌していく過程を描いたスリラー映画」であり、アーサーの身に起こった事は実際の出来事として描かれている。その結果、アーサーは「ジョーカー」というカリスマ的犯罪者としての地位を確立したが、最終的には警察に捕まり、現在は精神病棟に収容されている。

ご了承ください。

さて、感想ですが、本作は徹底して観客が主人公であるアーサーに感情移入出来る様な作りになっている様に感じられました。上映時間のほとんどを費やして描かれるアーサーの身に降りかかる様々な不幸。これらを通じて本作は観客にアーサーが感じた不快感を共有させようとしてきます。

また、この映画は、その不快感を「派手なSFXや音楽」などの要素で適切に解消させてくれる様な作りにはなっていません。普通の映画だったら観客に楽しんでもらうために、そういうわかりやすいエンタメ要素を盛り込んでくると思うのですが、あえて、そうはしなかったのでしょう。そうする事によって、アーサーの精神に積もっていく不快感を観客の精神にも同様に積もらせる作りになっているのです。カタルシスと言えるシーンはアーサーが殺人を行うシーンや、暴動シーンなどのアーサー自身がカタルシスを感じたであろうシーンだけです。

その結果、多くの観客は「これだけツラかったらジョーカーになっても仕方ないな」と感じる様になるでしょう。むしろ「ジョーカーになればスッキリ出来る!」と感じる観客も出てくるかもしれません。この辺りが本作が、そこまで過度な映像表現を用いていないにも関わらずR-15の指定を受けている所以でしょう。極めて不道徳な映画だと思いました。

ですが、この映画は、その不道徳性ゆえに、観客に「誰しもジョーカーになり得る」という感想や「それを防ぐにはどうすればよいのだろう?」と考えさせる効果も生み出すかもしれません。もし、そうなのであれば、本作は極めて社会的意義の高い映画であると言える…のかもしれません。(もちろん、映画に「社会的意義が必要」などと言うつもりはありませんが)

以上です。

タイトルとURLをコピーしました